ドイツ流ワーク・ライフ・バランスのススメ
“WIR MACHEN URLAUB”ドイツに3日間もいれば見聞きする、最重要単語のひとつ「Urlaub(ウアラウプ)」とは、「休暇」のこと。一般企業では、1年に30日の有給休暇を取得する権利が保障されているドイツ。土日と合わせればなんと6週間のホリデーを、“法律的に取らねばならない” びっくり先進国なのだ。イースター、夏休み、クリスマス、カーニバルなどの期間中は、店先に貼られた“Wir machen Urlaub(休暇中)”の注意書きが、面白いくらい頻繁に目につく。“働くために休む”日本人と“休むために働く”と思しきドイツ人は、地上から100億光年彼方の宇宙くらい、精神的にかけ離れているよう。誰も彼も、寝ても覚めてもウアラウプ。世間話の定番トピックが休暇であることも、お察しのとおり。ファミリーとホリデーを愛し、それでも能率主義で仕事をこなしまくるドイツ人の実態とは?米国に本拠地を置くオンライン旅行会社Expediaが実施している、休暇に関する定例調査「Vacation Deprivation Study」 2011年版*1によると、年次有給休暇日数平均はドイツ30日、アメリカ14日、イギリス25日、フランス30日、韓国10日、日本11日。うち実際の休暇取得日数平均はドイツ28日、アメリカ12日、イギリス25日、フランス30日、韓国7日、日本はたったの5日という結果。また、すべての休暇(有給休暇)を消化しない理由として「職場で否定的に受け取られるだろうから」と回答した人が、ドイツ7%、アメリカ・イギリス6%に対し、韓国17%、日本14%。「休暇中に一度もメールをチェックしない」人は、ドイツ・イギリスが全体の50%に対し、日本は13%。ホリデーに対する意識の差に、お国柄がここまで顕著に現れるのは興味深い。郷に入っては郷に従えというわけで……ウアラウプを思う存分に楽しんでいる私と家族。約3年前にドイツ・ケルンへ拠点を移して以来、日本とドイツをのぞきバケーションで訪れたのは、イギリス、フランス、スイス、ポルトガル、オランダ、ベルギー、スペイン、カナリア諸島、それからタイ。旅こそが人生の栄養であり、創造力の原点…を言い訳に、飛び回る一家。ホリデーへの並々ならぬ情熱は、まさにドイツ人レベルですね。さて、最近訪れたヨーロッパで、心に響いた風景を少しご紹介させていただくと
絵画から抜け出した美しさ。フランス・ノルマンディー地方にあるモネが愛したジヴェルニーの庭園*2は、時を超えて詩的なイマジネーションを喚起する。


今年4月前半のイースター休暇は、バルセロナにて恋焦がれていたガウディ建築三昧。カサ・バトリョ(写真左上*3)は夢を見させてくれる魔法の家。自然主義と象徴主義が混在するラビリンス、サグラダ・ファミリア(写真右上*4)。未完成であればこその美がある。グエル公園*5にある、かつてガウディが暮らした家(写真左下)。ヴィヴィッドな青空とラテンの空気が、ガルシア・マルケスが描く文学世界を連想させた。旅の終わりに、空港のワンシーン(写真右下)。世界のどこにいても、虹がやさしい気持ちを運ぶのはなぜだろう。
ところで、ワーキングママの身として気になるのは、仕事も育児もパワフルにこなす、ドイツのワーキングマザーたちの実像。一体どうタイムマネジメントして、バカンスも満喫しているのだろう? 3人のキャリアビューティのリアルな声を聞いてみた。
Katrin Jacke
カトリン・ヤッケ/ボーダフォン・ドイツ 人事部リーダーシップ・ディベロップメント部長
2歳児の母で現在第二子妊娠中
「1日のタイムスケジュールは、6:20起床、週に3日は7:30に息子を保育園へ送り届け(週に2日は夫が担当)、8:30出社、18:30頃に退社。16:30~17:00の保育園のお迎えは、夫か私の両親に任せているわ。19:00過ぎに帰宅し、すぐに食事の支度をして19:30頃には夕食タイム。絵本を読み聞かせて、20:30までには子どもを寝かしつけ。その後、夫との時間を楽しんで22:30~23:00に就寝」。週50~60時間労働をこなすカトリンは、金曜日は在宅勤務し、2週に1回は週末にも仕事する。「夫と育児をシェアし、自分たちの両親の助けを得ることが、能率よく仕事と育児を両立するポイント。長男誕生後は夫も4週間の育児休暇を取り、その後4ヶ月間、彼は時間短縮勤務を選んでくれた。私は4ヶ月の育児休暇後に職場復帰したわ。家族や大切な友人と多くの時間を一緒に過ごすことも大事よね」と彼女。有給休暇30日はすべて消化する。「休暇は家族と過ごすの。夫のファミリーが暮らすNYを訪ね、アメリカ東海岸で過ごすホリデーが2週間くらい。それにクリスマス休暇と、カナリア諸島のラ・パルマ島で約10日間のバカンスがお決まり」。
Indrani Nottebrock
インドラーニ・ノッテブロック/サンゴバン・ウェーバー社 人事部
5歳と2歳の二児の母
「6:30に起床してシャワー、家族が起きる前に7:15頃にこっそりオフィスへ向かう。8:10仕事開始、15:00頃に退社して16:00に子どもたちのお迎え。家事、買い物をこなし、子どもたちと遊び、18:00に食事の支度、18:30に子どもたちと夕食を。20:00に子どもたちを寝かしつけた後は、夫と映画鑑賞したり、スケジュール管理をしたりと自分時間」。週に2度はホームオフィスで仕事をし、週に約35時間労働をこなす。在宅勤務や時短勤務が受け入れられているドイツの起業風土は、働くママたちにとって有益なポイントだ。「子どもが就寝後、たまに家で仕事をすることもあるけれど、週末や休暇中にはまったく仕事をしない。私と夫両方の両親が近くに住んでいるから、仕事と育児を両立できるの。それに日々のオーガナイズは欠かせない。何よりも、子どもの面倒をよく見てくれる夫の存在がなかったら、私のライフスタイルはバランスを失ってしまうわ」。30日の有給休暇をすべて取得して、毎年さまざまな旅先へ出かけるという。「去年は、カナリア諸島にある託児所付きのホテルでビーチホリデーを。今年は南仏で3週間のキャンプホリデーを過ごすつもり」。
Dr. Ute Brambrink
Dr. ウーテ・ブラームブリンク/ボーダフォン・ドイツ スポークスマン
6歳と3歳の二児の母
博士号を持ち、現在は月曜から木曜日の8:00~13:00頃まで、週20~25時間の時短勤務をしているウーテ。オフィスにいる必要がなければ、水曜日は在宅勤務にしている。「13:00に仕事を終えて帰宅し、食事の準備をしていると14:00には長女が小学校から帰ってくる。長女と昼食を共にして、15:00に保育園から次女のお迎え。15:30~18:00はスポーツや音楽教室など、子どもたちをお稽古へ連れていくか買い物へ。19:30までに夕食を済ませて子どもたちを寝かしつけ、20:00から家事をこなす。毎朝起床は6:00、朝食は家族4人で」。週末や休暇中は仕事を持ち込まない主義だが、重要プロジェクト進行時のみメールチェック。「仕事と育児の両立の秘訣は、ご近所さんやママ友、その他の友人らとの助け合いネットワーク。それに最重要なのは夫の協力ね」という。「時短勤務なので有給日数は24日。ファミリーと一緒にすべて消化するわ。ドイツ・バイエルン州とイタリアで過ごすことが多いかしら」。
絵画から抜け出した美しさ。フランス・ノルマンディー地方にあるモネが愛したジヴェルニーの庭園*2は、時を超えて詩的なイマジネーションを喚起する。


今年4月前半のイースター休暇は、バルセロナにて恋焦がれていたガウディ建築三昧。カサ・バトリョ(写真左上*3)は夢を見させてくれる魔法の家。自然主義と象徴主義が混在するラビリンス、サグラダ・ファミリア(写真右上*4)。未完成であればこその美がある。グエル公園*5にある、かつてガウディが暮らした家(写真左下)。ヴィヴィッドな青空とラテンの空気が、ガルシア・マルケスが描く文学世界を連想させた。旅の終わりに、空港のワンシーン(写真右下)。世界のどこにいても、虹がやさしい気持ちを運ぶのはなぜだろう。
ところで、ワーキングママの身として気になるのは、仕事も育児もパワフルにこなす、ドイツのワーキングマザーたちの実像。一体どうタイムマネジメントして、バカンスも満喫しているのだろう? 3人のキャリアビューティのリアルな声を聞いてみた。
Katrin Jacke
カトリン・ヤッケ/ボーダフォン・ドイツ 人事部リーダーシップ・ディベロップメント部長
2歳児の母で現在第二子妊娠中
「1日のタイムスケジュールは、6:20起床、週に3日は7:30に息子を保育園へ送り届け(週に2日は夫が担当)、8:30出社、18:30頃に退社。16:30~17:00の保育園のお迎えは、夫か私の両親に任せているわ。19:00過ぎに帰宅し、すぐに食事の支度をして19:30頃には夕食タイム。絵本を読み聞かせて、20:30までには子どもを寝かしつけ。その後、夫との時間を楽しんで22:30~23:00に就寝」。週50~60時間労働をこなすカトリンは、金曜日は在宅勤務し、2週に1回は週末にも仕事する。「夫と育児をシェアし、自分たちの両親の助けを得ることが、能率よく仕事と育児を両立するポイント。長男誕生後は夫も4週間の育児休暇を取り、その後4ヶ月間、彼は時間短縮勤務を選んでくれた。私は4ヶ月の育児休暇後に職場復帰したわ。家族や大切な友人と多くの時間を一緒に過ごすことも大事よね」と彼女。有給休暇30日はすべて消化する。「休暇は家族と過ごすの。夫のファミリーが暮らすNYを訪ね、アメリカ東海岸で過ごすホリデーが2週間くらい。それにクリスマス休暇と、カナリア諸島のラ・パルマ島で約10日間のバカンスがお決まり」。
Indrani Nottebrock
インドラーニ・ノッテブロック/サンゴバン・ウェーバー社 人事部
5歳と2歳の二児の母
「6:30に起床してシャワー、家族が起きる前に7:15頃にこっそりオフィスへ向かう。8:10仕事開始、15:00頃に退社して16:00に子どもたちのお迎え。家事、買い物をこなし、子どもたちと遊び、18:00に食事の支度、18:30に子どもたちと夕食を。20:00に子どもたちを寝かしつけた後は、夫と映画鑑賞したり、スケジュール管理をしたりと自分時間」。週に2度はホームオフィスで仕事をし、週に約35時間労働をこなす。在宅勤務や時短勤務が受け入れられているドイツの起業風土は、働くママたちにとって有益なポイントだ。「子どもが就寝後、たまに家で仕事をすることもあるけれど、週末や休暇中にはまったく仕事をしない。私と夫両方の両親が近くに住んでいるから、仕事と育児を両立できるの。それに日々のオーガナイズは欠かせない。何よりも、子どもの面倒をよく見てくれる夫の存在がなかったら、私のライフスタイルはバランスを失ってしまうわ」。30日の有給休暇をすべて取得して、毎年さまざまな旅先へ出かけるという。「去年は、カナリア諸島にある託児所付きのホテルでビーチホリデーを。今年は南仏で3週間のキャンプホリデーを過ごすつもり」。
Dr. Ute Brambrink
Dr. ウーテ・ブラームブリンク/ボーダフォン・ドイツ スポークスマン
6歳と3歳の二児の母
博士号を持ち、現在は月曜から木曜日の8:00~13:00頃まで、週20~25時間の時短勤務をしているウーテ。オフィスにいる必要がなければ、水曜日は在宅勤務にしている。「13:00に仕事を終えて帰宅し、食事の準備をしていると14:00には長女が小学校から帰ってくる。長女と昼食を共にして、15:00に保育園から次女のお迎え。15:30~18:00はスポーツや音楽教室など、子どもたちをお稽古へ連れていくか買い物へ。19:30までに夕食を済ませて子どもたちを寝かしつけ、20:00から家事をこなす。毎朝起床は6:00、朝食は家族4人で」。週末や休暇中は仕事を持ち込まない主義だが、重要プロジェクト進行時のみメールチェック。「仕事と育児の両立の秘訣は、ご近所さんやママ友、その他の友人らとの助け合いネットワーク。それに最重要なのは夫の協力ね」という。「時短勤務なので有給日数は24日。ファミリーと一緒にすべて消化するわ。ドイツ・バイエルン州とイタリアで過ごすことが多いかしら」。
三者三様のライフスタイル。けれど、共通して彼女たちのワーク・ライフ・バランスの鍵を握るのは、育児を共有する夫のサポートと、家事をスピーディにこなす日々のオーガナイズ力、そして家族でたっぷり過ごすホリデーの存在にあり。ところで、日本女性の第一子出産後の離職率はおよそ7割。就職、結婚、妊娠、出産、育児……と、女性の人生イベントはさまざま。しかし、すべてを選択して女性が働き続けることが難しい日本の現実。しなやかに生きるドイツ女性の姿は、最高のロールモデルと言えるかもしれない。世界中の働く女性たちが、ドイツ流のウアラウプ至上主義を実現できる日が近いことを願って。
< 参考 >
- *1 Vacation Deprivation Study 2011年版
 - http://media.expedia.com/media/content/expus/graphics/other/pdf/vacation-deprivation-fact-sheetnov2011.pdf
 - *2 ジヴェルニーの庭園
 - http://www.museesdefrance.org/museum/serialize/backnumber/0507/museum_0507.html
 - *3 カサ・バトリョ
 - http://www.casabatllo.es/
 - *4 サグラダ・ファミリア
 - http://www.sagradafamilia.cat/
 - *5 グエル公園
 - http://www.parkguell.es/
 
A refreshing, slow life from Cologne
- No.002
 - “German-style work-life balance advice”
 - MONDAY, 24st APRIL, 2013 by Etsuko Aiko
 
< References >
- *1 Vacation Deprivation Study 2011
 - http://media.expedia.com/media/content/expus/graphics/other/pdf/vacation-deprivation-fact-sheetnov2011.pdf
 - *2 Giverny Garden
 - http://fondation-monet.com/en/
 - *3 Casa Batllo
 - http://www.casabatllo.es/
 - *4 Sagrada Familia
 - http://www.sagradafamilia.cat/
 - *5 Güell Park
 - http://www.parkguell.es/
 









