#038_3「ストーリーのあるモノを見つけに。私のお気に入り“エシカル”」

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毎日のお買い物をはじめとする消費行動を、自分だけでなく世界にとっても価値がある選択に変えていく「エシカルなライフスタイル」について特集している、今月のFeatures。 1回目2回目に続き、今回はエシカル協会代表理事の末吉里花さんに、お気に入りのエシカルアイテムをご紹介してもらいます。「こんなエシカルな視点もあるんだ」という新しい発見や、エシカルなアイテムにしか出せないユニークな魅力との出会いがあるかも。

〈お話を伺った人〉 末吉 里花さん 一般社団法人エシカル協会代表理事、フリーアナウンサー。レポーターとして世界各地を旅する中で、環境問題や人権問題に関心を持ち、現在はフェアトレードやエシカルを中心に活動を展開。講演やセッションを通して、社会におけるエシカルな行動システムの構築に携わる。近著「はじめてのエシカル」(山川出版社)


Ethical items #1
アップサイクルのアイテムたち
アップサイクルとは、使わなくなった物や廃棄物に、リメイクで新しい価値を持たせること。末吉さんお気に入りのアップサイクルアイテムは、インドの古いサリーの布で作られたバッグ、グアテマラの古着で作られたPCケース、そしてブラジルの空き缶のプルタブで作られたポーチ。 どのアイテムも現地で作られているので、素材だけでなくデザインや技術にもローカルの特長が表れている点も魅力的です。 「どれも物を通して、作られた国の特長や情景がイメージできるんです。持っているだけで『グアテマラの人がこんなにカラフルな服を着ているなんて知らなかったよね』『ブラジルの人ってユニークな発想を持っているんだ』などの気づきを周りの人とシェアできて、遠い国への新しい興味や知識のきっかけが生まれます」(末吉さん)

Ethical items #2
伝統工芸の技が光る小物たち
地域の特産や技術を守っていくことも、エシカルなアクションの一つ。産業や技術の衰退を防ぐことが、小さな町や村を健全に存続させていく手立てになるからです。 「徳島の藍染アーティストBUAISOUは、染料となる藍を育てるところから、藍染め、デザイン、商品制作まで、すべてを自分たちの手で行っている若い4人組。徳島県外から集まったメンバーが、徳島の伝統工芸を守り、同時に現代的な形で表現している、本当に素敵なブランドです。個人的にも好きなブランドで、取材も含めて4度も訪問してしまいました(笑)」(末吉さん) 他にも、和とモダンの融合がお洒落な、会津若松の漆塗りでできた携帯カバーや、伐採される青森産のリンゴの木で作られた、なめらかな手触りのブレスレットなど、日本の技術や自然を感じさせてくれる小物に自然と気持ちがほっこり和みます。

Ethical items #3
オーガニックなビールやワイン
オーガニックワインやクラフトビールも、実はエシカル。美味しいから、からだに良さそうだから、という理由で飲まれている方がほとんどかと思いますが、実は製造過程においても土壌の保護やCO2の削減などに一役買っているものが多く、環境的にもエシカルなお酒なのです 「こういったお酒の製造には深いストーリーやこだわりがあり、飲む機会に生産者の思いを詳しく知ることができるので、より一層おいしく感じるんですよね。 また、食べ物も無理のない範囲で有機栽培や自然栽培のもの、地産のものを買うようにしています。手間のかかる栽培なので当然割高にもなり得るのですが、生産者の意志を“買い支える”ためにも、もっと積極的に選ばれるようになるといいなと思います」(末吉さん)

Ethical items #4
フェアトレードの洋服たち
フェアトレードとは、フェア(公正)な価格で取引をすることで、経済的に厳しい状況にいる国の人々の自立と、豊かな生活を促す貿易の形。 「11年前、ファッション雑誌VOGUEで見つけた1枚の白いワンピース。それが、私がフェアトレードに大きな関心と関係を持ち始めた決定的なきっかけでした。 単純に可愛いなと思った服がフェアトレードの商品だと知って、『これだ!』と思ったんです。自分が好きなファッションを通してだったら、きっと続けていける、と」(末吉さん) 撮影に持ってきてくれたのは、オーガニックコットンのデニムとワンピースに、エチオピア産のクラッチバッグ。 「アンドゥアメットのバッグは、世界最高峰と言われるエチオピアンシープスキンを使ったラグジュアリーバッグ。フェアトレードの認証マークがついたブランドではありませんが、環境配慮をしている工場の選定や、現地の職人の労働環境や適性収入の保障をはじめ、フェアでエシカルなビジネスの中で生まれた新しい価値を、商品のクオリティとブランドストーリーを通して感じ取れます」(末吉さん)

3回に渡って、エシカルな暮らし、そしてエシカルな消費について特集してきた、今月のFeatures。日々の暮らしの中で「100%エシカル」を実践することはできなくても、エシカルというキーワードを胸の片隅にそっと置いておくだけで、私たちの生活、環境、社会のすべてに、きっとポジティブな変化が生まれるはず。 一羽の蝶の羽ばたきが世界の反対側の気候に影響を与える“バタフライ・エフェクト”を信じて、身近なことからエシカルな選択・アクションをはじめてみませんか? もうすぐ春。新しい毎日、新しい自分のはじまりです。
参考文献:はじめてのエシカル/末吉里花 取材協力:末吉里花(一般社団法人エシカル協会代表理事) 撮影場所:navarre Tokyo