YUKIHIRO TAKAHASHI:Power of simplicity

YUKIHIRO TAKAHASHI:Power of simplicity

Five Roads #6

2020.03.24

唯一無二の独創性で人々にインスピレーションを与える人物。彼らは、FIVEISM ✕ THREEというブランドの在り方を体現している。FIVEISM ✕ THREEでは、そんな人物のことを“Ikon(アイコン)”と呼んでいる。たとえば日本が世界に誇るミュージシャン、高橋幸宏。決して前に出て自己主張するわけではない。でも彼には彼のスタイルがある。“Power of simplicity”、シンプルだからこそ揺るがない。そんな男だからこそ50年以上にわたって音楽シーンのトップを走り続けることができるのだろう。

高橋幸宏は知る人ぞ知る釣りマニアだ。「音楽をしているとき以外の時間は、釣りをしていたい」。そんな冗談のようなセリフを真顔で語る。 「釣りはもう40年はやっているかな。今はフライフィッシング専門です。釣りをしていると他のことはぜんぶ忘れる(笑)。『釣りしているときに曲が浮かんだりするんですか?』ってよく聞かれるんだけど、そんなことありえない。頭のなかで、何故か昔のコマーシャルソングがグルグルまわってたりすることはあるけど(笑)」

現在67歳、ビジネスパーソンなら定年を迎えている年齢だ。彼が毎日釣りばかりの“余生”を過ごしていたとしても、誰も文句は言わないだろう。それでも彼は釣り竿を置いたら相変わらず日本のトップクリエイターとして、音楽を作り続け、またときにはファッションデザイナーとして、足跡を刻み続けている。

「なぜ音楽を続けているかというと、意志が弱いから。やめる勇気がないからだと思う。僕は弱音を吐くけど、弱虫じゃないんだ(笑)。まあ、やめる必要もないしね。僕はずっと変わっていないから。好きなこと、興味があることをやっているだけ。売れたいとも思わないし、売るための努力もしたくない。YMOだって、好きなことをやっていたらたまたまマス(大衆)と交錯しただけ。でも売れたからといってそこにとどまろうとも思わなかった。音楽の世界って、売れ続けるのは大変なんですよ。1回売れたら、そこにとどまり続けなきゃならない。でもそんなのすぐ飽きちゃうからね」

音楽が好き。だから続ける。そこにはそれ以上の理由はない。 「以前、教授(坂本龍一)が『音楽の力って言葉が嫌い』って言ってたけど、僕もまさに同感。音楽が人を変えるとか、人を救うとかおこがましいと思う。たまたま救われた人もいるかもしれない。でも僕はそんなことのために音楽をやっているわけじゃないから」 おもしろいと思ったら、年齢も国境も関係ない。海外の無名のミュージシャンとFacebook経由で音源のやり取りをすることもあれば、20歳代のミュージシャンとの交流もあるという。

「『いまを大切に』ってよく言うでしょ。僕はそこに意味を感じない。いまより未来、今日より明日。1時間先が楽しいかもって思えるから頑張れる。年とっても少しでも健康でいたいと思うのは、もしかしたら明日はもっと楽しいんじゃないかって思っているからなんですよ」

けっして無理はせず、自分らしく、自分のままで。まさに“Power of simplicity”。そんな高橋も若いころは、苦しい思いをしたこともあったという。 「昔の僕は、常にいい人であろうとしていた。誰かに嫌われるなら、自分が無理をしてでもいい人でいたかった。でも大人になればなるほど、そういうことからどんどん解放されて、生きるのが楽になったんだよね。いまでもいい人でありたいとは思っていますよ。でもそこにとらわれることはない。とらわれないで生きていきたいと思っています」

彼が目標とする“大人”はどんな人なのだろうか? 「昔から笠智衆さんには憧れていましたね。『東京物語』の笠さんなんて、いまの僕より年下のはずだけど、あの雰囲気がたまらなく好きだった。最近のクリント・イーストウッドもカッコいいなあ。マカロニ・ウエスタンの時代はぜんぜん興味なかったけど、おじいちゃんになってからぐっと好きになった。男は年をとればとるほどカッコよくなれるから得だよね(笑)」

撮影が行われたのは、丸の内の「VISIONARIUM THREE」。高橋はそこにならぶFIVEISMのアイテムを興味深そうに眺めていた。「僕はもう、いまさら化粧なんて」と笑うものの、「眉はこれがいいのかな」と興味を隠せない様子。いまより未来、今日より明日を大切にする彼だからこそ、好奇心が衰えることなく、いつまでも世代や国境を越えて憧れられる高橋幸宏でいられるのかもしれない。

YUKIHIRO TAKAHASHI

1952年生まれ、東京都出身。立教高校在学中からスタジオ・ミュージシャンとして活躍。武蔵野美術大学短大時代に加藤和彦に誘われてサディスティック・ミカ・バンドに加入。1978年、細野晴臣、坂本龍一とともにYMOを結成。ソロとしては1978年の1stアルバム『Saravah!』以来、2013年の『LIFE ANEW』までに通算23枚のオリジナルアルバムを発表。2018年にはソロ活動40周年を記念し、1stアルバム『Saravah!』のヴォーカルをリテイクし、新たにミックスダウン&マスタリングを施した『Saravah Saravah!』を発表。ソロ活動と並行してTHE BEATNIKS、SKETCH SHOW、pupa、In Phase、METAFIVEなど様々なバンドでも活躍し、常に日本の音楽シーンをリードしてきた第一人者。自身のファッションブランドを立ち上げるなど、デザイナーとしての一面も持つ。

Staff credit

  • Photos:Yozo Yoshino
    Make-up:HIROKI@FIVEISM × THREE
    Direction & Text:Kosuke Kawakami