Plant Vibe feat. THREE Vol.3

アロマ調香デザイナー・齋藤智子が教える、“精油フレグランス”を身にまとう喜び

アロマ調香デザイナーとして活躍する齋藤智子さん。

THREE「 エッセンシャルセンツ 」は精油から作られた、プラントベースのフレグランス。なぜ、現代のライフスタイルに精油の香りがフィットするのか。その魅力を精油のスペシャリストが紐解き、分析する。

精油が叶える、モダンな香りのある生活

—「エッセンシャルセンツ」は100%精油によるフレグランスですが、今までこのような香水が存在しなかった理由は何でしょうか?

大昔は、植物性であろうと動物性であろうと、すべて天然の香料が使われていました。当時は芸術のために香りがクリエイトされていましたし、貴族たちだけが楽しむ高貴な存在でした。また、アロマはそもそも薬理的な役割を担うもの。たとえばアスピリンも植物が持つ鎮痛の働きを取り出すなど、植物の香りは一般的にも活用されていたんです。さらに、消臭を意識した使い方もあり、貴族が革のグローブを身につける際にネロリの香りを活用したという話もあり、むしろ香水の始まりは精油などの天然香料ともいえるでしょう。

11月、「エッセンシャルセンツ」の発売に合わせ、表参道でポップアップショップを開催。
キーとなる共通の精油、ゼラニウムの香りに包まれた空間では齋藤さんによるワークショップも行われた。

—現代のような香りの楽しみ方はなかったのでしょうか?

実用性を追求する一方で、ジャスミンのような惹きつける香りを堪能する、いわゆる“飾る”という文化も発展していきました。しかし、自然界のものなので精油などが安定的に作れるかといったらそうではない。人工香料が発展していく中で私たちがこの数十年慣れ親しんできた「香水」がメインストリームとなっていったと言えるでしょう。

—では、このフレグランスは原点回帰とも言える存在ですね。精油だからこそ醸し出せることは、どんな部分でしょうか?

たとえばラベンダーの精油は300種類以上の芳香成分を含むのに対して、合成香料の場合は、ラベンダーの香りを印象付ける15〜20種のように少ない芳香成分で成立します。つまり、精油はなだらかでゆるやかなカーブを描くような芳香のグラデーションを持っている、と言えます。実際、多くの人々が精油のラベンダーに奥行きやふくよかさを感じることが多い。その魅力に惹かれる人は非常に多くなってきた印象です。

基盤となる石のニュアンスを放つ00 WRITTEN IN STONEからカルダモンのふくよかで奥行きある香りが特徴の 04 SPIRIT OF EDENなど、「エッセンシャルセンツ」は5つの香りで展開。

—その背景にはどんなことがあるとお考えですか?

以前はナチュラルなものを好むことに対して、「カジュアル」だったり「いい人っぽい」といった印象を無意識で抱いていたのでは、と考えています。しかし、コロナウイルスが蔓延したことでルームフレグランスを使う人が増えたり、精油が持つ天然の香りを楽しむ習慣がだんだんと浸透していきました。そこで、ナチュラルさの多面的な個性に気がついたのではないでしょうか。この「エッセンシャルセンツ」、5つの香りもただナチュラルなわけではなく、さまざまな表情を持ち、さまざまな魅力を含んでいますよね。精油にも多くのアイデンティティがあることを発見し、その香りの美しさ、心地よさを見出すようになったと考えています。オーガニックな香りが好きだけどモダンなファッションを好む人が増えるなど、人々のスタイルはより多角的になってきました。

シームレスに広がる心地よさ

ニュートラルな自分へと戻し、マインドを清らかにする00 WRITTEN IN STONEを纏う齋藤さん。
手首や首筋にプッシュして、香りをほのかに漂わせて。

—そもそも既存のフレグランスの合成香料の多くは、植物をモチーフにしていますよね。人間は植物や花、果実などの香りにどうしても惹かれていくことが理解できます。

きっと、より本質的なものを求めるようになったのではないでしょうか。自然界が持つ本来の精油、香りを纏うこと、楽しむことはものすごく贅沢なこと。気負わないラグジュアリーな体験のひとつだと思います。また、男性や女性、年齢の垣根がそもそも存在しないという点も、現代においてのチャーム。「エッセンシャルセンツ」の香りに対して、「フェミニンだ」とか「大人っぽい」といったラベリングをする人は少ないはずです。もっと直感的に響いて、無条件で心地いいと思えるシームレスな世界観を感じます。

共通の精油はゼラニウム。
熊本県の南阿蘇にあるTHREEのハーブガーデンで摘まれたもので、無農薬の土壌で育ち、高い鮮度を持った特別なものに。

—さまざまな香水の楽しみ方がありますが、精油フレグランスの最大の魅力とはどんな部分だとお考えですか?

ファッション性を持って、その日のスタイルを盛り上げるような主張ある香りの楽しみ方はもちろん素敵です。ただ、それだけではなく、他者のためではなく自分のために香りを取り入れたり、わずかに漂う香りで身近な人へとアプローチできる大自然の恵み、精油の芳香を楽しんでほしい。ナチュラルだけど、意思を持って選べるという新しい側面。この原点回帰とも言える精油のフレグランスが生活にひとつあるだけで、気負わず、無理なく、自然に新しい自分と出会える。それこそが、精油フレグランスの持つパワーだと思います。

Profile
齋藤智子(アロマ調香デザイナー®︎)

TOMOKO SAITO AROMATIQUE STUDIO代表、一般社団法人プラスアロマ協会代表理事。京都で10代続く家に生まれ、白檀の香りに魅かれて調香の世界へ。「天然の香りで、調える」をコンセプトに日本の木の精油にこだわり、持続可能性を大切にした香りづくりと空間演出を行う。15年間で創作した香りは6,000種以上で、代表作に「TRANSITIONS」(ミラノデザインアワードベストテクノロジー賞 / Panasonic Exhibition)など。2023年には調香デザインチーム「TOMOKO SAITO AROMATIQUE STUDIO」をローンチした。著書『香りの作法』(翔泳社)、『アロマ調香デザインの教科書』(BABジャパン出版)

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